2010年9月アーカイブ

2010年9月28日

イノベーションの原理と方法  -なすべきでないこと <3> -

 イノベーションを成功させるために「なすべきではないこと」の三つめについてです。

「第三に、未来のためにイノベーションを行おうとしてはならない。現在のために行わなければならない。たしかに、イノベーションは長期にわたって影響を与えるかもしれないし、二〇年たたなければ完成しないかもしれない。だが、『二五年後には、大勢の高齢者がこれを必要とするようになる』というだけでは十分ではない。『これを必要とする高齢者はすでに大勢いる。もちろん時間が味方だ。二五年後には、もっと大勢の高齢者がいる』と言えなければならない。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 半歩先のビジネスは成功するが、一歩先は行き過ぎ、ということです。なぜなら、冒頭に述べたように、イノベーションとは「変化(機会)」を「市場を拡大・創造する」ために「利用する手段」だからです。現時点で、機会が存在せず、目的がないのであれば、イノベーションにはなり得ません。
 司法書士業界でも、相続や成年後見といった高齢化社会を見据えたサービスの開発が行われていますが、今現在そのニーズがなければ、ただのアイデアで終わってしまうでしょう。経営者としては、なかなか判断が難しいところですね。

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2010年9月24日

イノベーションの原理と方法  -なすべきでないこと <2> -

 イノベーションを成功させるために「なすべきではないこと」の二つめについてです。

「第二に、多角化してはならない。散漫になってはならない。一度に多くのことを行おうとしてはならない。(中略)イノベーションには核が必要である。(中略)イノベーションにはそれを行おうとする人たちが、たがいに理解し合っていることが必要である。そのためにも、統一、すなわち共通の核となるものが必要である。多様化や分散は、この統一を妨げる。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 たとえば、士業のワンストップサービスを標榜する場合、「弁護士、税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士がワンストップで問題を解決します。」といっても、一般のひとにはピンとこないかもしれません。どのような場面でワンストップであることが活かされるのか。「起業」「IPO」「相続」など、核となるものがあって始めて、具体的なサービス内容をイメージし、それを欲しいと思うクライアント候補が現れるのではないでしょうか。
 また、事務所の経営陣や各士業間で、ワンストップサービスのイメージがバラバラでは、クライアント候補にも伝わらないと思います。

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2010年9月21日

イノベーションの原理と方法  -なすべきでないこと <1> -

 P.F.ドラッカーは、イノベーションを成功させるために「なすべきではないこと」も三つあると言います。

「第一に、凝りすぎてはならない。イノベーションの成果は、普通の人間が利用できるものでなければならない。多少とも大きな事業にしたいのであれば、さほど頭のよくない人たちが使ってくれなければ話にならない。つまるところ、大勢いるのは普通の人たちである。組み立て方や使い方のいずれについても、凝りすぎたイノベーションは、ほとんど確実に失敗する。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 利用者のレベルに合わせてスペックを決め、高齢者向けに機能を絞った「らくらくホン」が高齢者マーケットに火をつけました。また、遺言の書き方が数多く出版されるなかで、コクヨの「遺言書キット」が群を抜いて売れたのも「凝りすぎなかった」ということが大きな理由であると思います。
 司法書士事務所の経営者が新しい商品を開発する際も、アレもコレもと詰め込みすぎるのはよくないでしょう。

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2010年9月17日

イノベーションの原理と方法  - なすべきこと <5> -

 イノベーション成功の鍵を握る五つめの要素は「トップをねらうこと」です。

「具体的な戦略としては、産業や市場において支配的な地位をねらうものから、プロセスや市場において小さなニッチをねらうものまで、いろいろありうる。しかし起業家としての戦略は、何らかの意味において、トップの座をねらうものでなければならない。さもなければ、競争相手に機会を与えるだけに終わる。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 岐阜県の地方銀行である大垣共立銀行では、新入社員に対して「何でもいいから一番になること」という訓示を必ず与えるそうです。その心は「日本で二番目に高い山は誰も知らない」ということです。
 トップと二番手にはそれくらいの有利、不利があります。二番手が、その差を埋めるためには多大な努力と時間が必要です。でも、余程のことがない限り、その間にトップは次の段階に進んでしまっているでしょう。
 「地域で一番」「○○の分野で一番」の司法書士事務所になるという目標を掲げることは大事です。何で一番を目指すか、事務所の経営理念とも関わってきます。また、既にトップの事務所と同じことをしていても追いつくことは難しいですから、どうやって一番になるか、戦略をたてることが重要ですよね。

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2010年9月15日

イノベーションの原理と方法  - なすべきこと <4> -

 イノベーション成功の鍵を握る四つめの要素は「小さく生んで大きく育てること」です。

「あまりにも大がかりな構想、産業に革命を起こそうとする計画はうまくいかない。多少の資金と人材をもって、限定された市場を対象とする小さな事業としてスタートしなければならない。さもなければ、調整や変更のための時間的な余裕がなくなる。イノベーションが、最初の段階からほぼ正しいという程度以上のものであることは稀である。変更がきくのは、規模が小さく、人材や資金が少ないときだけである。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 物ごとはやってみなければわからないという側面がありますから、できるだけ多くのチャレンジをして、そのなかでうまくいったものを残すことが、成功へとつながります。大きく一発勝負にでるよりも、小さなチャレンジを何回も行うほうが成功への確率は高まります。
 少し違う例ですが、司法書士法人が拠点展開する場合も、始めは少ない人材とスペースで業務も絞ってスタートすることが多いと思います。始めから大々的に出店すると、そこから飛躍的に成長するということが厳しいですし、何かを読み間違えたときに、撤退するかどうかの経営判断も難しくなりますから、リスクは高いですよね。

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2010年9月10日

イノベーションの原理と方法  - なすべきこと <3> -

 イノベーションの成功の鍵を握る三つめの要素は「シンプルであること」です。

「第三に、イノベーションに成功するには、焦点を絞り単純なものにしなければならない。一つのことに集中しなければならない。さもなければ、焦点がぼける。単純でなければうまくいかない。新しいものは必ず問題を生じる。複雑だと、直すことも調整することもできない。成功したイノベーションは驚くほど単純である。まったくのところ、イノベーションに対する最高の賛辞は、『なぜ、自分には思いつかなかったか』である。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 以前、あるベンチャーキャピタリストから同じような話を聞いた事があります。一分で説明ができないビジネスモデルは成功しないそうです。クロネコヤマトの「宅急便」もセコムの「ホームセキュリティサービス」も、非常にシンプルですよね。
 司法書士の職域は広がり、司法書士ができることはたくさんあります。どこに焦点をあてて絞り込んでいくのか、経営者としての考えどころですね。

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2010年9月 8日

イノベーションの原理と方法  - なすべきこと <2> -

 P.F.ドラッカーは、イノベーションは「知覚的な認識である」といいます。

「イノベーションを行うにあたっては、外に出、見、問い、聞かなければならない。このことは、いかに強調してもしすぎることがない。イノベーションに成功するものは右脳と左脳の両方を使う。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 イノベーションに必要な「なすべきこと」のふたつめは、端的にいえば「現場主義であるべし」ということです。
 前回あげた例でいえば、機会の分析をして、高齢の女性の「おひとりさま」を対象としたイノベーションを考えるのであれば、まずは「女性のおひとりさま」の家を訪ねて話を聞くことが大切です。
 パソコンは持っているのか、買い物はどうしているのか、空いている時間はどうやって過ごしているのか、現場に出向き、彼女たちの価値観やニーズを知覚しなければ、イノベーションは成功しないということです。
 司法書士事務所の経営者が新しいサービスを考える場合も、そのサービスがお客さまの習慣や価値観にマッチするものかどうかを知覚する必要があります。それなしにサービスを開発しても、お客さまが欲しがることはないでしょう。

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2010年9月 1日

イノベーションの原理と方法 - なすべきこと <1> -

 イノベーションとは、一般的には「新機軸」「革新」と訳されますが、P.F.ドラッカーは、次のように定義しています。

「イノベーションとは起業家に特有の道具であり、変化を機会として利用するための手段である。」(『イノベーションと起業家精神』上田惇生編訳)
「イノベーションは、市場に焦点を合わせなければならない。製品に焦点を合わせたイノベーションは、新奇な技術は生むかもしれないが、成果は失望すべきものとなる。」(『マネジメント』上田惇生編訳)

 つまり、イノベーションとは「変化」を「市場を拡大・創造する」ために「利用する手段」であり、成果をあげるためには、経営者はそれを上手に使わなければいけないということです。
 今回からしばらくは、イノベーションを行うために「なすべきこと」「なすべきでないこと」「必要な条件」について考えていきたいと思います。
 P.F.ドラッカーは、「なすべきこと」を五つあげています。その一番目からみていきましょう。

「第一に、イノベーションを行うためには、機会を分析することから始めなければならない。(中略)  (1)予期せぬこと (2)ギャップ (3)ニーズ (4)構造の変化 (5)人口の変化 (6)認識の変化 (7)新知識の獲得   これら七つの機会のすべてについて、体系的に分析することが必要である。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 (4)の「構造の変化」について具体例をあげてみましょう。
 日本の世帯数のうち、65歳以上の人がいる世帯の割合は、平成2年時点では約27%(1100万世帯)でしたが、平成19年には、約40%(1900万世帯)を占めるまでになりました。さらに、それを65歳以上の女性のみの単独世帯でみてみると、平成2年では3.3%(約130万世帯)だったものが、平成19年には6.6%(約310万世帯)でした。つまり、おばあちゃんのひとり暮らしが17年間で倍増しているのです。

 近年「おひとりさま」を対象とした、さまざまなサービスが生み出されるようになっていますが、これは世帯の構造変化を「機会」と捉えてイノベーションが行われた結果といえます。司法書士業界でも、相続や成年後見の分野で、新しいサービスの開発が進んできていますね。

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山口 毅
TAKESHI YAMAGUCHI

山口 毅
株式会社コンサルティングファーム 代表取締役
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