2010年5月アーカイブ

2010年5月28日

勇気をもつ - 意思決定の秘訣 <15> -

 意思決定の最後は、あたりまえですが「決定を下すこと」です。今まで述べてきたことで、決定に必要な準備・検討はすべて整っているはずです。P.F.ドラッカーはいいます。

「とうとうここで、決定には判断と同じくらい勇気が必要であることが明らかになる。薬は苦くなければならないという必然性はない。しかし一般的に、良薬は苦い。決定が苦くなければならないという必然性はない。しかし一般的に、成果をあげる決定は苦い。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 一般的に、今までやってきたことを変えることには、さまざまな痛みや大きな反響を伴います。いいことばかりでないことは容易に想像がつきますから、準備が整い、いよいよ決定を下そうというその時に、二の足を踏んでしまうというケースが実はとても多いのです。

 しかし、誰かがその意思決定を行わなければなりません。
 損な役回りですが、それは経営者(司法書士事務所であれば、事務所の所長または法人の社員)の仕事です。組織の意思決定は、経営者の利益ではなく、組織の利益を最優先に考え、経営者が下すべきものなのです。

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2010年5月25日

決定は本当に必要か - 意思決定の秘訣 <14> -

 P.F.ドラッカーは、意思決定を行うべきかどうかも選択肢のひとつであるといいます。決定を行わないことも代替案のひとつだからです。

「楽観的というわけではなく、何もしなくても問題は起こらないという状況がある。『何もしないと何が起こるか』という問いに対して、『何も起こらない』が答えであるならば、手をつけてはならない。状況は気になるが、切実ではなく、さしたる問題が起こりそうもないというときは、問題に手をつけてはならない。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 司法書士事務所も新しい時代のビジネスモデルの構築に誰もが躍起になっています。他の事務所が始めたことを「自分も取り入れないと時代遅れになるのでは?」と焦って取り入れるケースが見られますが、他の事務所は他の事務所です。経営者は、自分の事務所は、いま何をしなければならない時期かをしっかりと見極めなければなりません。
 「何もしないと何が起こるか」と問うことで、その答えが見つかるかもしれませんね。

 P.F.ドラッカーはまた、中途半端な意思決定に警鐘を鳴らします。

「扁桃腺や盲腸を半分切除しても、完全に切除した場合と同じように、感染などのリスクがある。手術は、するかしないかである。同じように決定も、行うか行わないかである。半分の行動はない。半分の行動こそ、常に誤りであり、必要最低限の条件、すなわち必要条件を満足させえない行動である。」(「プロフェッショナルの条件」上田惇生編訳)

 司法書士事務所において、新しく債務整理のサービスを行おうと考えたとしましょう。

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2010年5月19日

満場一致に注意せよ - 意思決定の秘訣 <13> -

 P.F.ドラッカーは、GMのトップであったスローンが、最高レベルの意思決定を行う際、満場一致の時こそ意思決定を行わなかったという逸話を紹介しながら、「意見の不一致」が意思決定に不可欠であると説いています。

「第一に、組織の囚人になることを防ぐからである。あらゆる人が、決定を行う者から何かを得ようとしている。特別のものを欲し、善意のもとに、都合のよい決定をしてもらおうとする。決定を行う者が、大統領であろうと、設計変更を行う新人の技術者であろうと変わらない。それら特別の要請や意図から脱するための唯一の方法が、十分検討され、事実によって裏付けられた反対意見である。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)
「第二に、選択肢を与えるからである。いかに慎重に考え抜いても、選択肢のない決定は向こう見ずなばくちである。決定には、常に間違う危険が伴う。最初から間違っていることもあれば、状況の変化によって間違いになることもある。決定のプロセスにおいて、他の選択肢を考えてあれば、次に頼るべきものとして、十分に考えたもの、検討済みのもの、理解済みのものをもつことができる。選択肢がなければ、決定が有効に働かないことが明らかになったとき、途方にくれるだけである。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)
「第三に、想像力を刺激するからである。問題を解決するには、想像力は必要ないとの説がある。だが、それは数字の世界だけである。政治、経済、社会、軍事のいずれであろうとも、不確実な問題においては、新しい状況をつくり出すような創造的な答えが必要である。想像力、すなわち知覚と理解が必要である。第一級の想像力は潤沢にはない。とはいっても、一般に考えられているほど稀なわけでもない。しかし想像力は、刺激しなければ隠れていて使われないままになる。反対意見、特に理論付けられ、検討し尽くされ、かつ裏付けられている反対意見こそ、想像力にとってのもっとも効果的な刺激剤となる。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 意思決定を行うための話し合いは、異なる意見を戦わせ、それぞれの意見の優位性や問題点を浮き彫りにして、最終的に経営者が意思決定を行う判断材料を集めるために行われるというわけです。
 司法書士事務所も組織体となってきており、会議体での意思決定を行うシーンも増えていると思います。そのような場における意思決定の方法を聞いてみると、往々にして「満場一致で」と答える事務所が多数あります。

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2010年5月12日

評価測定の基準には選択肢が必要  - 意思決定の秘訣 <12> -

 前回あげた司法書士事務所における広告メディアの選択について、具体的に考えてみましょう。
 広告の目的は、もちろん依頼者候補に事務所に来てもらって相談を受け、案件を受託することです。今の時代、「高齢者はネットを見ない」という言葉は疑わしいですよね。百歩譲って、紙媒体を見る高齢者の方のほうが多いとしても、タウンページだけで今回のサービスを表現できるのでしょうか?あなたの街のタウンページを見ている高齢者の方はどれくらいいらっしゃるのでしょう。
 インターネットはタウンページのようにエリアを限定しませんから、見る確率は少ないかもしれませんが、母数としては圧倒的に多いでしょう。また、ホームページのほうがサービスの内容を細かく表現できますので、依頼者自身が自分の課題を深く考えたうえでサービスを受けようと連絡をしてくる可能性が高いといえます。
 「評価測定の基準」が「案件の受託」ということであれば、ネットのリスティング広告のほうが有効という判断が適切ではないでしょうか。

 また、P.F.ドラッカーは「評価測定の基準」について、いくつかの選択肢が必要だとも説いています。

「評価測定のための適切な基準を見つけ出すことは、統計上の問題ではない。それはすでに、リスクを伴う判断の問題である。判断を行うために、いくつかの選択肢が必要である。一つの案しかなく、それにイエス、ノーを言うだけでは判断とはいえない。いくつかの選択肢があって初めて、何が問題であるかについて正しい洞察を得られる。したがって、決定によって成果をあげるためには、評価測定の基準についてもいくつかの選択肢が必要である。それらの中から、もっとも適切な基準を選び出さなければならない。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 今回のケースでも評価測定の基準として、「媒体を見る」「事務所に連絡がくる」「事務所に相談に来る」「来所して依頼する」といった選択肢をあげることが可能です。どこを基準にするかで判断が異なりますから、基準ごとに広告方法を比較・検証する必要があります。選択肢ごとの問題点と優位性が見えてくれば、経営者がよりよい意思決定を行うために十分な判断材料となるのではないでしょうか。

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2010年5月 7日

評価測定のための基準を見出す - 意思決定の秘訣 <11> -

 事務所の経営は意思決定の連続であり、判断に迷うことが多々あります。なぜなら経営者に求められる判断は、可変的要素の組み合わせから結果が出てくる類のものばかりで、事前の予想が難しい「やってみなけりゃわからない」ということがほとんどだからです。

 P.F.ドラッカーは、そのような状況下で成果をあげる意思決定を行うためには「評価測定の基準」が重要だと説いています。

「そもそも何が事実であるかを確定するには、判断の基準、特に評価測定の基準についての決定が必要である。これが成果をあげる決定の要であり、通常、最も判断の分かれるところである。したがって成果をあげる決定は、決定についての文献の多くが説いているような事実についての合意からスタートすることはない。正しい決定は、共通の理解と、対立する意見、競合する選択肢をめぐる検討から生まれる。最初に事実を把握することはできない。判断の基準がなければ、事実というものがありえない。事象そのものは、事実ではない。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 ある司法書士事務所が限られた広告予算で集客をしたいと考え、広告メディアを選択するというケースを例にとって考えてみましょう。

 広告代理店は効果が上がった事例を示して、ネット上のリスティング広告の優位性を説明するでしょう。しかし、今回広告したい商品は、以前から扱っている「債務整理」ではなく、高齢者を対象とした「相続」に絡む商品です。所長は疑問を投げかけます。「対象となる高齢者の方が、果たしてネットで相続対策サービスを検索するだろうか?」 そこへ、タウンページの広告代理店が次のように言って営業をかけてきます。「高齢者の方はネットなど見ることはありません。なんといっても紙媒体であるタウンページが有効です。」

 もっともらしい意見ですが、あなたが所長だったら、すぐに契約をしますか?何を基準とすればよいのか、次回に考えてみましょう。

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プロフィール

山口 毅
TAKESHI YAMAGUCHI

山口 毅
株式会社コンサルティングファーム 代表取締役
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