2010年4月アーカイブ

2010年4月28日

現場に直接触れるフィードバック - 意思決定の秘訣 <10> -

 P.F.ドラッカーは「現場に直接触れるフィードバック」の重要性についても強調しています。

「コンピュータの到来とともに、このことはますます重要になる。決定を行う者が、行動の現場から遠く隔てられるからである。自ら出かけ、自ら現場を見ることを当然のこととしないかぎり、ますます現実から遊離する。コンピュータが扱うことのできるものは抽象である。抽象されたものが信頼できるのは、それが具体的な現実によって確認された時だけである。それがなければ、抽象は人を間違った方向へ導く。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 司法書士事務所も成長するにつれ、組織の拡大にともなう役割の分化、専門性の高まりによる仕事の分化、拠点展開による空間の分離などが起こり、全体を統合して判断することが難しくなります。そうなってくると、経営者はすべての情報を抽象化された数字としてしか把握できなくなってしまいます。
 しかし、行った意思決定の成果は、抽象化された数字や日々の報告書からだけでは判断がつきません。具体的な成果は、現場で起こっているはずです。
 現場に赴いて、現場の声を聞き、数字とあわせて成果が出ているかどうかを総合的に判断するという姿勢は、組織化のプロセスのなかで、ますます重要になっていくのではないでしょうか。

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2010年4月21日

フィードバックの仕組みを作る - 意思決定の秘訣 <9> -

 成果をあげる意思決定を行ううえで必要とされる五つのステップの最後は、フィードバックの仕組みを作ることだと、P.F.ドラッカーは述べています。

「決定を行うのは人である。人は、間違いを犯す。最善を尽くしたとしても、必ずしも最高の決定を行えるわけではない、最善の決定といえども、間違っている可能性は高い。そのうえ、大きな成果をあげた決定も、やがて陳腐化する。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 ここでは、「意思決定は間違う可能性があること」と「当初は最適な決定も、環境の変化で意味をなさなくなる」という2つのことが述べられています。
 2008年、佐賀地裁は、諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門の開門を命じました。今後どのような判断が下されるかは分かりませんが、最初の意思決定のなかに当初の結果と異なる結果が出た場合、後戻り(ないしは別の選択が)できるスイッチが組み込まれていたら、問題ははるかに容易に解決できたのではないでしょうか。
 また現在、民主党政権下で租税特別措置法の見直し論議が活発に行われています。既得権益となりがちなこの制度は、毎年のように改正され、制度の改正・廃止・新設が頻繁です。しかし、税法その他の法律も、その重要度に応じて、期間が過ぎれば一度廃止したり、新たに作り直すというスイッチをいれておいたほうがよいかもしれません。

 とかく、決まったものを見直すことを個人も組織も面倒だと考え、嫌がるものです。しかし、決定したことが正しかったのか、いまだに有用な決定であるか、を見直すことは、次の意思決定を行う際の重要なヒントになります。
 先に述べたような国や政府といった大きな組織だけでなく、企業や司法書士事務所においても、経営者が意思決定を行う場合は、それを見直しする期間を必ず設け、決定の正否と陳腐化について考える仕組みも取り込んでおくべきでしょう。

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2010年4月16日

決定を行動に移す要件 - 意思決定の秘訣 <8> -

 前回の続きで、「決定を行動に移す」具体的な方法について考えてみましょう。

「決定を行動に移すには、『誰がこの意思決定を知らなければならないか』『いかなる行動が必要か』『誰が行動をとるか』『行動すべき人間が行動するためには、その行動はいかなるものでなければならないか』を問わなければならない。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 以前、あるフランチャイズチェーン店の方とお仕事をしたときに、成功するフランチャイジーと失敗するフランチャイジーの見極め方を教えてもらいました。失敗するフランチャイジーは、必ず下記のどちらかにあてはまるそうです。

  (1)サイドビジネスでフランチャイズをはじめ、その事業に社長だけ
    が一生懸命(社員がその事業の位置づけを理解していない)
  (2)責任者に任命された人間が片手間にマネジメントをしている
    (本来業務を別にもっている)

 つまり、P.F.ドラッカーが述べた「決定を行動に移す」要件にしたがっていないことが、失敗の原因といえます。

  (1)「誰がこの意思決定を知らなければならないか」
     ⇒ 今回はじめる新事業が、本業とどのような関係があって、
       会社としてどのような位置づけであるのか、を明確に社員
       に知らせておかなければ、関係する社員も傍観者になって
       しまいます。

  (2)「いかなる行動が必要か」「誰が行動をとるのか」「行動すべき
    人間が行動するためには、その行動はいかなるものでなければ
    ならないか」
     ⇒ 新しい事業ですから、責任者の兼務はやめるべきです。
       従来業務をはずして、新事業の成功のために注力する
       ようにミッションを明確にすべきです。
 
 司法書士事務所でも「新しいこと」をはじめる場合、経営者は、以下のような「行動に取り組むためのプロセス」までを、意思決定に組み込んでおかなければ意味がないでしょう。

  (1)責任者を明確にする
  (2)その責任者に「新しいこと」をさせる時間を確保すべく
    従来の仕事を減らす
  (3)責任者以外のメンバーに事務所における「新しいこと」
    の位置づけを明確にする
  (4)「新しいこと」の優先順位と、どの程度まで協力すべきか
    といったことも各メンバーに明示する

 

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2010年4月12日

決定を行動に移す - 意思決定の秘訣 <7> -

 成果をあげる意思決定を行ううえで必要とされる五つのステップの第四は、決定を行動に変えることです。しかも決定自体に行動へのプロセスが組み込まれていなければならないと、P.F.ドラッカーは述べています。

「決定は、最初の段階から行動への取り組みをその中に組み込んでおかなければ、成果はあがらない。事実、決定の実行が具体的な手順として、誰か特定の人の仕事と責任になるまでは、いかなる決定も行われていないに等しい。それまでは、意図があるだけである。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 司法書士事務所の経営者が「日本一の司法書士事務所を目指す」「エンドユーザー1万世帯を顧客化する」といった意思決定をしても、それまでの実行プロセスが明示されなければ、それは、P.F.ドラッカーのいう「意図」に過ぎません。

「これこそ、企業の経営方針の決定によく見られる状況である。すなわち、経営方針なるものには、行動するための措置が何も盛り込まれていない。その実行が、誰の仕事にも、誰の責任にもなっていない。そのため、それらの経営方針は、トップがまったく行う気のないお題目と冷たい目で見られることになる。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 そのままでは、経営者は「狼少年」となり、重要な意思決定をしても、誰もついてこない最悪の状況に陥ります。では、決定を行動に移すために具体的にはどうすればよいのでしょうか。次回に考えてみましょう。

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2010年4月 7日

何が正しいかを考える - 意思決定の秘訣 <6> -

 成果をあげる意思決定を行ううえで必要とされる五つのステップの第三は、何が正しいかを考えることだと、P.F.ドラッカーはいいます。

「やがては妥協が必要になるからこそ、最初から、誰が正しいか、何が受け入れられやすいかという観点からスタートしてはならない。満たすべき必要条件を満足させるうえで何が正しいかを知らなければ、正しい妥協と間違った妥協を見分けることができない。その結果、間違った妥協をする。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 これは当たり前のことのようですが、意思決定が行われる実際のシーンでは、そうなっていないことがよくあります。

 例えば、猫(ボス)の首に誰が(どうやって)鈴をつけるかという場合。
 大手企業の経営管理部門からの依頼によくあるケースです。以前、大手飲食チェーンの人事部から「人事制度構築」の相談を受けたのですが、オーナー社長の威光に沿うようにとの前提つきのものでした。私は、「効果が出ないものには着手できない」と、結局は依頼をお断りしました。
 また、司法書士事務所など比較的小規模な組織でよくみられるケースもあります。事務所内に影響力を持つ人(例えば司法書士事務所におけるベテランの補助者など)がいて、その人が正しい意思決定にネガティブな場合です。ボスがその人に気を遣いすぎたり、説得が億劫だと思うことから起こる現象です。
 いずれにしても上記のようなステークホルダーがいる場合、「その人たちに受け入れやすい決定」から最初に考えてしまうので、満たすべき(正しい)必要条件は検討すらされないことになります。

 始めから妥協している決定と、正しいことを明確にしたうえで妥協された決定では、明らかに結果が異なります。前者は、必要条件をまるで満たさないことの方が多いのです。
 まずは正しいことは何かを考えて、それを前提にどのような妥協が可能かを考えるように(順番を間違えないように)注意しましょう。

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プロフィール

山口 毅
TAKESHI YAMAGUCHI

山口 毅
株式会社コンサルティングファーム 代表取締役
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