2010年3月アーカイブ

2010年3月31日

問題解決の必要条件は何か - 意思決定の秘訣 <5> -

 成果をあげる意思決定を行ううえで必要とされる五つのステップの第二は、決定が満たすべき必要条件を明確にすることだと、P.F.ドラッカーはいいます。

「必要条件を簡潔かつ明確にするほど、決定による成果はあがり、達成しようとするものを達成する可能性が高まる。逆に、いかに優れた決定に見えようとも、必要条件の理解に不備があれば、成果をあげられないことが確実である。必要条件は、『この問題を解決するために最低限必要なことは何か』を考え抜くことによって明らかになる。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 ある司法書士事務所が、「クライアントに対してより良い(これ自体も事務所ごとに定義する必要がありますが)サービスを提供して、選択され、ゴーイングコンサーンのための利益を出し続けることができる組織作り」を求める成果としていたとしましょう。しかし、現象として起こっている問題が「恒常的な残業」による、未払い残業代、スタッフのモチベーションの低下、スタッフの頻繁な退職、サービスの質の低下であった場合、「この問題を解決するために最低限必要なこと」は何でしょうか。

  (1)残業代を支払いつつも利益を出すこと。
  (2)スタッフのモチベーションが高くなること
     (少なくとも下がらないこと)。
  (3)スタッフの健康を害さない程度の残業時間に抑えること。
  (4)クライアントのサービスの質が高まること
     (少なくとも低下しないこと)。

 という四つが、必要条件としてあげられます。でも、「残業をしない」という意思決定では(4)を満たさず、「残業はしてもらうが残業代は野放図に出す」という意思決定では、(1)~(3)を満たしません。
 このように必要条件を満たさない「現場対応的な処理」は「成果をあげる意思決定」にならず、かえって現場の混乱を招くことになります。

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2010年3月26日

問題は四種類ある - 意思決定の秘訣 <4> -

 P.F.ドラッカーは、成果をあげる意思決定を行ううえで必要とされる五つのステップの第一を行うためには、対象となる問題が次の「四種類」のうちのどれに該当するかを判断する必要があると述べています。

「まず、基本的な問題の兆候に過ぎない問題がある。仕事の中で起こってくる問題のほとんどが、この種のものである。(中略)次に、当事者にとっては例外的だが、実際には基本的、一般的な問題がある。(中略)三つめとして、真に例外的、特殊な問題がある。(中略)そして最後に、そのような何か新しい種類の基本的、一般的な問題の最初の現われとしての問題がある」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 三つめと四つめの問題にあたるかどうかの判別が難しいのですが、どちらもまずは、一つめの「基本的な問題の兆候にすぎない問題」ではないかと疑ってみましょう。判断を誤る確率は低くなります。
 二つめの「当事者にとっては例外的だが、実際には一般的な問題」については、他でも同じ問題が起こっているわけですから、ベンチマークが有効な手段となります。
 三つめの「真に例外的な問題」については、個別に意思決定が必要となりますが、滅多に起こる問題ではありません。
 判断の誤りは「問題の先送り」「未解決」という状況をもたらします。ほとんどは一つめの問題に該当するのですから、まずはそこから出発する癖をつけることですね。

「圧倒的に多く見られる間違いは、一般的な状況を特殊な問題の連続としてみることである。一般的な状況としての理解を欠き、したがって解決についての原則を欠くために、現場対応的に処理することである。結果は、常に失敗と不毛である。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 前回とりあげた司法書士事務所における「恒常的な残業」を、経営者が「現場対応的に処理する」と、残業代の未払い、スタッフのモチベーションの低下、スタッフの頻繁な退職、サービスの質の低下といった「失敗と不毛」を招くことになります。

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2010年3月23日

問題の多くは基本に関わる  - 意思決定の秘訣 <3> -

 司法書士事務所における経営課題のひとつに、特に都市部の司法書士事務所でみられる「恒常的な残業」があります。この問題についての経営者のコメントは概ね次のとおりです。

  (1)だらだらと調べ物をする時間が多すぎる。
  (2)みんなで集まって相談しながら判断するために、時間がかかり
    すぎる。
  (3)クライアントからの依頼が夕方からなので、夜になってしまうこと
    は致し方ない。
  (4)謄本とりで忙殺されている。

 上に掲げた点を改善しようという意思決定を行えば、課題は解決されるでしょうか?みなさんはどのようにお考えになりますか。P.F.ドラッカーのいう「問題の多くは基本に関わる」との視点で考えてみてください。

 私でしたら、「事務所として、いま何に集中すべきかを明確化しよう」そして「集中すると決めたことで効果を出すためには何を行わなければならないかを決めよう」という意思決定を行います。
 このような基本的な意思決定が行われていれば、

  (1)まったく異なる種類の仕事を、同時並行的にひとりの人間が
    行なうことはやめよう。
  (2)業務フローを確定させて、すべてのメンバーが共通の方法で
    仕事をしよう。
  (3)司法書士有資格者は有資格者の仕事、スタッフはスタッフの
    仕事をしよう。
  (4)何をすれば評価されるのかを明確にしよう。

 といった次のレベルの意思決定が可能となり、現場で起こっている個別・具体的な問題を解決することにつながるのです。

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2010年3月19日

正しい意思決定を導く五つのステップ - 意思決定の秘訣 <2> -

 前回も紹介した株式会社アイデアは、「TRIZ(トゥリーズ)」の日本企業への導入コンサルティングで、圧倒的な実績を誇っています。その代表である前古さんが、以前、次のようなことを話されていました。

「日本企業は、1990年代後半に相次いで「TRIZ(トゥリーズ)」の導入を図ったが、ほとんどが失敗した。しかし、アイデア社がコンサルティングを行ったなかで失敗したケースは皆無であり、なぜ失敗するのか分からなかった。よくよく調べてみると、失敗した会社は、そもそもの問題が何かという課題設定のところで間違った判断をしていた。前提が異なるので、その(誤った)課題を「TRIZ(トゥリーズ)」に適用しても、問題の解決には至らないのです。」

 「音がうるさい」という問題を解決するために、ただ、「音を静かにする」ための手法をデータベースから探しても解決は得られないのです。このケースでの課題は、「音が出る部品と部品がおかれた基礎の密着性」にあったということです。

 P.F.ドラッカーは、ベル・テレフォン・システム社を世界最大の電話会社に育てあげたセオドア・ヴェイルと、GMを世界最大の自動車メーカーに育てあげたアルフレッド・P・スローン・ジュニアを優れた経営者として評価しており、共通する意思決定の特徴を次のように分析しています。

「第一に、問題の多くは基本に関わるものであり、原則や手順についての意思決定を通してのみ解決できることを認識していた。第二に、決定が満たすべき必要条件を明確にしていた。第三に、決定が受け入れられやすくするための妥協を考慮する前に、正しい答えすなわち必要条件を満足させる答えについて徹底的に検討した。第四に、決定に基づく行動を決定のプロセスに組み込んでいた。第五に、決定の適切さを結果によって検証するために、フィードバックを行った。これらが、成果をあげる意思決定を行ううえで必要とされる五つのステップである。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 五つのステップについては、次回以降でそれぞれにみていきますが、まずは第一の「問題の多くは基本に関わるものであり、原則や手順についての意思決定を通してのみ解決できる」という部分について、司法書士事務所での課題と照らし合わせて考えてみたいと思います。

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2010年3月15日

意思決定のための基礎知識 - 意思決定の秘訣 <1> -

 私の友人で、株式会社アイデアの代表の前古さんは、技術開発のあらゆるシーンにおいて最適な方向を示唆し、効率的な問題解決へとエンジニアを導く画期的な問題解決理論「TRIZ(トゥリーズ)」のコンサルティングを日本のトップメーカーに対して行っています。

 「TRIZ(トゥリーズ)」は、旧ソ連の特許審査官であったゲンリッヒ・アルトシュラー(Genrikh Altshuller)の指導のもと、世界中の250万件にもおよぶ膨大な特許の分析を行い、そこに見出された一連の法則を体系的で構造化された思考方法として構築したものです。
 技術者は、トレードオフにある課題の解決手段を探して常に試行錯誤しています。探す手段としては、自身の知識・経験・ひらめきに頼っているのが実情でしょう。「TRIZ(トゥリーズ)」は、「その課題はあなたが世の中で始めてぶち当たったものではなく、すでに世の中の誰かが過去に直面し、特許という形でその解決方法を表しているのだから、それを参考にしよう」という考えを基本として、その探し方と特許のデータベースがセットになったものです。従来までの思考プロセスを改め、より効率的に問題解決行う手助けとなるでしょう。
 この「TRIZ(トゥリーズ)」をビジネスの世界に応用しようとの研究も進んでおり、私たちが経験的に行ってきた判断を、より科学的に行うことができる取り組みは、今後ますます進化していくことと思います。

 さて、司法書士事務所においてプロフェッショナルとして働く方々は、経営者や部門のマネージャーに限らず、さまざまな局面において「意思決定」を求められます。「始めるか始めないか」、「続けるか終了するか」、「受け入れるか拒否するか」、「今なのか半年後なのか」、ビジネスは数限りないさまざまな意思決定と実行の繰り返しです。そのなかには判断が難しく、どのような意思決定をしても、その正誤は紙一重という問題が多くあります。

 「TRIZ(トゥリーズ)」のような意思決定を行うための科学的・汎用的な手法やデータベースがビジネスの世界でも今後開発されるかもしれませんが、既にその基礎知識については、P.F.ドラッカーが、私たちに多くを残してくれています。次回以降しばらくは「意思決定の秘訣」についてP.F.ドラッカーに学びながら考えてみましょう。

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2010年3月 3日

必要なのは勇気だ - 集中するために <4> -

 P.F.ドラッカーは、優先順位や劣後順位の決定についてはいくつかの原則があるが、それらはすべて勇気に関わるものだといいます。

「第一に、過去ではなく未来を選ぶことである。第二に、問題にではなく機会に焦点を当てることである。第三に、横並びにではなく自らの方向性を持つことである。第四に、無難で容易なものではなく、変革をもたらすものに照準を合わせることである。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 私は多くの司法書士事務所のコンサルティングを行っていますが、成長している事務所は、まさに上記の原則に則って、勇気ある意思決定に基づいて事務所の経営を行っています。

 「パイの奪い合いという競争はクライアントにとって一定の恩恵はあるものの、大きな価値をもたらさない」というのが私の持論です。現在、パイの奪い合いを「手段」としてではなく「目的」としてとらえている事務所が多いような気がします。
 社会にとって新たな価値をもたらさない者は、社会に必要とはされません。いつか新しい価値を提供する者に、取って代わられる運命にあります。

 成果をあげる組織となるためには、ドラッカーの言う「未来」「機会」「自らの方向性」「変革」という観点から、やるべきことを決定する勇気が経営者には不可欠といえるでしょう。

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プロフィール

山口 毅
TAKESHI YAMAGUCHI

山口 毅
株式会社コンサルティングファーム 代表取締役
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