2009年9月アーカイブ

2009年9月30日

強みは何か - 自らの強みを知る <2> -

 「強み」という言葉は最近よく使われます。しかし「強み」とは何か?実は、わかっているようでわかっていないことが多いようです。
 P.F.ドラッカーは次のように言います。

「誰でも、自らの強みについてはよくわかっていると思っている。だが、たいていは間違っている。わかっているのは、せいぜい弱みである。それさえ間違っていることが多い。しかし何ごとかをなし遂げるのは、強みによってである。弱みによって何かを行うことはできない。できないことによって何かを行うことなど、とうていできない。」(「プロフェッショナルの条件」上田惇生編訳)

 私がメンターエージェントという司法書士を中心とした士業の人材紹介を始めて3年になります。毎年150名ほどの人材の方とお会いしていますが、明確な形で自身の「強み」を認識し、その「強み」を生かそうと考えている方は少ないように感じます。(そのためメンターエージェントでは、「キャリアプラン作成キット」を作り、自分の「強み」と「弱み」を整理していただくことを始めました)
 
 事務所の経営者の本音は、「一緒に働いてみないと本当のところは分からないから、雇ってみるか」といったところでしょうが、なるべくなら事前にその方の「強み」と「弱み」を理解したうえで、採用の可否を決めたいものです。採用されるほうも、事務所に入ってから事務所の求める「強み」を自身が持っていないことを認識するよりも、事前に知りえて自ら辞退するほうがいいに決まっています。早めに決着をつけることがお互いのためであるのに、両者とも自身の「強み」や「弱み」をきちんと把握していないために、伝えあえていないように感じます。

 では、「強み」を知るためにはどうしたらよいのでしょうか? それは次回にお話しましょう。

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2009年9月24日

生き生きと働くための方法  - 自らの強みを知る <1> -

 労働寿命が長期間になり、知識労働者が働く組織よりも長く生きることになるとして、P.F.ドラッカーは次のように言います。

「これからは、誰もが自らをマネジメントしなければならない。自らをもっとも貢献できる場所に置き、成長していかなければならない。やがて、働く期間は五〇年に及ぶ。その間、生き生きと働くことができなければならない。自らが行うこと、その行い方、行うとき、さらにはそれをいつ、いかに変えるかを知らなければならない。」(「プロフェッショナルの条件」上田惇生編訳)

 右肩あがりの経済成長と終身雇用を前提とした時代(といっても、その期間は長い歴史のなかでは、ひと時の夢だったのかもしれません)は去り、P.F.ドラッカーが言うように組織の栄枯盛衰のスピードが急激に速くなってきた昨今、知識労働者の働き方も「ひとりで働く」から「組織のなかで働く」、さらに「自身が役割を果たすことができる組織で働く」と変化してきているように感じます。

 私自身のことで恐縮ですが、司法書士事務所を経営していた約8年の間、私は事務所の成長段階にあわせて、自らのミッションを変えてきました。最初は「営業して仕事を取ってくること」、次に「多くのパートナーに参画してもらい彼らが仕事を取ってくるように支援すること」、最後は「大量受注大量処理型のビジネスモデルから課題解決型のビジネスモデルに事務所が転換するための種を作ること」というようにです。そしてさらに、自身の事務所での役割以上のミッションを仰せつかって、現在のコンサルティングファーム(専門家を通して社会の貢献する)を設立するにいたりました。
 振り返ってみると、P.F.ドラッカーのいう「自らをマネジメントする」「自らをもっとも貢献できる場所に置く」ということを実践してきたのだなと思います。

 司法書士事務所の経営者も、そこで働く資格者やスタッフも、役割が異なるだけで組織のなかで働く知識労働者であることにかわりはありませんから、どちらも「自らをマネジメントする」「自らをもっとも貢献できる場所に置き、成長する」ことを意識して実行する必要があります。
 ただ経営者には、自らのことだけではなく、組織に属する知識労働者が「自らをマネジメントし」「自らをもっとも貢献できる場所に置き、成長できる」ように支援することが求められます。また、そのことと組織の成長をハーモナイズすることも経営者の役割として忘れてはいけないでしょう。

 自身を生かし、人をも生かす。そのためには「自らの強みを知」るとともに「人の強みを知」らなければなりません。次回以降は、その方法について、P.F.ドラッカーに学んでいきたいと思います。

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2009年9月16日

成長と自己変革を続けるために

 P.F.ドラッカーは「私の人生を変えた七つの経験」は決してユニークな普遍性のないものではないと言っています。

「これらのことを紹介したのは、簡単な理由からである。それは、私が知っている人のうち、長い人生において、ずっと成果をあげてきた人のすべてが、私と同じようなことを、どこかで学んでいるからである。企業で成功した人、学者で成功してきた人もそうである。軍人もそうである。医師や教師や芸術家もそうである。」(「プロフェッショナルの条件」上田惇生編訳)

 そしてこれらの教訓の前提になることのほうが、さらに重要であると説いています。

「しかし、これらのことすべての前提となるべきもっとも重要なこととして、成果をあげ続け、成長と自己変革を続けるには、自らの啓発と配属に自らが責任を持つということがある。」(「プロフェッショナルの条件」上田惇生編訳)

 事務所の経営や自身のキャリアについてビジョンがあり、自身でその実現のために意思決定し、行動できる事務所経営者については「そうすればよい」ということで話は済みます。しかし、雇用された知識労働者(司法書士事務所でいえば司法書士有資格者)にこのことを求め行動してもらうことは、なかなか難しいものです。多くの経営者がその困難さを実感されていると思いますが、それを実現しない限り、組織は強くなりませんし、継続もできません。

 P.F.ドラッカーは続けます。

「しかしそれでもなお、一人ひとりの人間の啓発は本人の責任としなければならない。配属の責任も、本人の責任としなければならない。さもなければ、今日のように長い期間働くようになった時代において、知識労働者がいつまでも成果をあげ、生産的であり続け、成長し続けることは到底望みえない。」(「プロフェッショナルの条件」上田惇生編訳)
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2009年9月 9日

何によって知られたいか - 成長と変化を続けるための教訓 <7> -

 七つの経験の最後は「シュンペーターからの教訓」です。
 企業家の行う不断のイノベーションが経済を変動させるという理論を構築したヨーゼフ(引用文中ではジョセフ)・シュンペーターは、P.F.ドラッカーの父アドルフの教え子です。その死の直前にドラッカー父子がシュンペーターを訪れたときのお話です。

「突然、父はにこにこしながら、『ジョセフ、自分が何によって知られたいか、今でも考えることはあるかね』と聞いた。(中略)シュンペーターは、その二冊の経済学の傑作を書いた三〇歳ごろ、『ヨーロッパ一の美人を愛人にし、ヨーロッパ一の馬術家として、そしておそらくは、世界一の経済学者として知られたい」と言ったことで有名だったからである。 彼は答えた。『その質問は今でも、私には大切だ。でも、むかしとは考えが変わった。今は一人でも多く優秀な学生を一流の経済学者に育てた教師として知られたいと思っている』。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 P.F.ドラッカーは、この会話から三つのことを学んだそうです。

 「一つは、人は、何によって人に知られたいかを自問しなければならないということである。二つめは、その問いに対する答えは、歳をとるにつれて変わっていかなければならないということである。成長に伴って、変わっていかなければならないのである。三つめは、本当に知られるに値することは、人を素晴らしい人に変えることであるということである。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 司法書士をはじめ多くの士業の方たちは、自身が実務家として経営者として果たしたい成果(専門性を高める、営業力をつける、業績をアップするなど)をまずは第一に考えるでしょう。その目的を果たすことができれば、それは確かに素晴らしいことです。しかし、その人が成果を出し続けられるのは、自身が現役で働いている間のことだけです。
 成果をあげる一方で、人材を育み、みなさんの意思を継ぐ組織を作り上げることができたとしたら、どうでしょう。みなさんは数代にも渡って社会への貢献を行うことができるのです。

 幕末の吉田松陰や緒方洪庵は、多くの傑出した人材に影響を与えました。これらの先人のようにとはいかないまでも、社会により貢献できる人材を、事務所を経営するなかで育て上げることができたなら・・・・・・なんと素晴らしいことかと思われませんか。

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2009年9月 2日

書きとめて見比べる  - 成長と変化を続けるための教訓 <6> -

 六つめは、「イエズス会とカルヴァン派の教訓」です。
 P.F.ドラッカーによると、カソリックのイエズス会とプロテスタントのカルヴァン派は、16世紀前半に創設され、まったく同じ学習方法をもとに成長したそうです。

「イエズス会の修道士やカルヴァン派の牧師は、何か重要な決定をする際に、その期待する結果を書きとめておかなければならないことになっていた。一定期間の後、例えば九ヵ月後、実際の結果とその期待を見比べなければならなかった。そのおかげで、『自分は何がよく行えるか、何が強みか』を知ることができた。また『何を学ばなければならないか、どのような癖を直さなければならないか』、そして『どのような能力が欠けているか、何がよくできないか』を知ることができた。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 司法書士に限らず私たち専門家は、実務家として、経営者として、継続的に学習し成長していかなければなりません。さらに経営者は、事務所を「学び成長する組織」に変革していかなければなりません。
 しかし、成長や変革を急に起こすことはできません。「書きとめて」おき「見比べる」といった一見単純そうな作業を繰り返し続けること、そして常に、自分の強みや事務所の経営課題を明らかにしていくことこそが、成長と変革につながっていくのです。

 P.F.ドラッカーは続けます。

「私自身、この方法を五〇年以上続けている。この方法は、『強みは何か』という、人が自らについてすることのできるもっとも重要なことを明らかにしてくれる。『何について改善する必要があるか』『いかなる改善が必要か』も明らかにしてくれる。さらには、『自分ができないこと、したがって行おうとしてはならないこと』も教えてくれる。 そしてまさに、『自らの強みが何か』を知ること、『それらの強みをいかにしてさらに強化するか』を知ること、そして『自分には何ができないか』を知ることこそ、継続学習の要である。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)
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山口 毅
TAKESHI YAMAGUCHI

山口 毅
株式会社コンサルティングファーム 代表取締役
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