2009年8月26日

新しい仕事が要求するものを考える - 成長と変化を続けるための教訓 <5> -

 五つめは「シニアパートナーの教訓」です。

 保険会社の証券アナリストから投資銀行に転職したP.F.ドラッカーは、シニアパートナーの補佐役をやっていたそうですが、創業者の一人がドラッカーを呼びつけて次のように叱責したそうです。

「『保険会社のアナリストとしてよくやっていたことは聞いている。しかし、証券アナリストをやりたいのなら、そのまま保険会社にいればよかったではないか。今君は、補佐役だ。ところが相も変わらずやっているのは証券アナリストの仕事だ。今の仕事で成果をあげるには、いったい何をしなければならないと思っているのか。』」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 これを受けてドラッカーは、以下のことを習慣とするようになったそうです。

「このとき以来、私は新しい仕事を始めるたびに、『新しい仕事で成果をあげるには何をしなければならないか』を自問している。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 コンサルタントとしてさまざまな人や組織に関わってきたドラッカーは、このことに関連して次のような感想を漏らしています。

「一〇年あるいは十五年にわたって有能だった人が、なぜ急に凡人になってしまうのか。私の見てきた限り、それらの例のすべてにおいて、原因は、昇進した者が、ちょうど私が六十年以上前、あのロンドンの投資銀行に入ったばかりのころにしていたこととまったく同じことをしていることにある。 彼らは、新しい任務に就いても、前の任務で成功していたこと、昇進をもたらしてくれたことをやり続ける。そのあげく、役に立たない仕事しかできなくなる。正確には、彼ら自身が無能になったからではなく、間違った仕事の仕方をしているために、そうなっている。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 私は司法書士として事務所を経営していたとき、4回ほど踊り場を経験しました。
 最初は売上を立てるために、とにかくがむしゃらに実務と営業に励み、ある程度基盤ができたところで、「自分自身がこの組織で不要となるためにはどうすればよいのか」を考えて行動するようにしました。その結果、本当に「自分は必要ないのではないか」と思う局面(踊り場)が4回ほどあったのです。
 私は人間として、父親として、実務家として、経営者としてどのような役割を果たすべきかを常に考え、行動しています。ドラッカーのいう「『新しい仕事で成果をあげるには何をしなければならないか』を自問している。」を、日々実践しようと努めています。

 司法書士試験に合格して勤務したとき、勤務した司法書士事務所でマネージャーとなったとき、独立をしたとき、人材を採用したとき、マネージャーをおくようになったとき、支店を出したとき、事務所の承継を意識して後進を育てるとき・・・・・・「新しい仕事で成果をあげるには何をしなければならないか」を自問しなければなりません。そして経営者となったからには、当然、所員や後継者に対して、そのことを伝えていかなければならないでしょう。

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プロフィール

山口 毅
TAKESHI YAMAGUCHI

山口 毅
株式会社コンサルティングファーム 代表取締役
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