2009年5月アーカイブ

2009年5月27日

組織の存在理由   -事務所の経営目標を考える-

 先日ある士業事務所の所長から、事務所のビジョンについてお話をうかがった際に「理にかなっているな」と感心したことがありました。
 その所長は、事務所の利益率をもっとも高くし、クライアントの満足度を最高まで高めることができるクライアント数・所員数・所員の構成についての理想型(ここでは「事務所の黄金律」と呼びましょう)をはじき出し、それを目標に事務所の経営を行っているそうです。
 「誰(どの士業)」が、「誰(対象とするクライアント)」に、「何(どのようなサービス)」を、提供するかによって具体的な数値や内容は異なってくるわけですが、P.F.ドラッカーの言葉と対比して考えると、実に面白い。

 P.F.ドラッカーは、

「外の世界への奉仕という組織にとっての唯一の存在理由からして、人は少ないほど、組織は小さいほど、組織の中の活動は少ないほど、組織はより完全に近づく」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 と述べています。

 「外の世界への奉仕」とは、先に述べた「クライアントの満足度を最高まで高める」ということです。それが組織の唯一の存在理由ですから、そのために何が必要かを順番に考えてみましょう。

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2009年5月22日

働く者をとりまく組織の現実  -成果をあげられない4つの要因 <4>-

 最後の現実は、

「第四に、組織の内なる世界にいるという現実がある。(中略)しかるに、組織の中に成果は存在しない。すべての成果は外の世界にある。客が製品やサービスを購入し、企業の努力とコストを収入と利益に変えてくれるからこそ、組織としての成果があがる。組織の中に生ずるものは、努力とコストだけである。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 ということです。

 事務所で働くメンバーは、事務所の外へ直接サービスを提供することによって成果を出すことができる知識労働者ばかりではありません。事務所内の他のメンバーへ貢献することのみが、自らの成果であるというメンバーも多くいます。そのようなメンバーに対しては、組織がどのような社会的役割を果たすことができ、どのような成果をあげているのか、を具体的に説明してあげる必要があります。
 
 自らの成果が間接的にでも対外的な成果をもたらしていることを知れば、そのメンバーは、より自律的に、そして、より効果的に自身が成果をあげるために行動し始めるでしょう。

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2009年5月21日

働く者をとりまく組織の現実  -成果をあげられない4つの要因 <3>-

 3つめは、当たり前のことですが忘れがちなことです。

「第三に、組織で働いているという現実がある。すなわち、ほかの者が彼の貢献を利用してくれるときにのみ、成果をあげることが出来るという現実である。(中略)通常、成果をあげるうえでもっとも重要な人間は、直接の部下ではない。他の分野の人、組織図の上では横の関係にある人である。あるいは上司である。それらの人と関わりをもち、自らの貢献を利用してもらい、成果に結びつくようにしなければ、いかなる成果もあげられない。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 申請書を作るスタッフは、上司である資格者の指示やチェックがなければ申請書を作ることができませんし、そもそも作成した申請書を申請してもらわないことには、いくら苦労してそれを作ったとしても、なんの効果も生むことができません。
 組織のなかで働く以上、自らを生かしてくれる上司や同僚は必要不可欠です。そして、その人たちに対し、自身がいかに役立てるか、貢献できるか、を理解してもらう努力が必要なのです。それは、自らの能力をアップさせること以上に重要なことと言えます。

 自身が成果をあげるためには、「唯我独尊」ではなく、自身を活かしてくれる「他の者」の存在が必須なのだということを認識しなければなりません。

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2009年5月20日

働く者をとりまく組織の現実  -成果をあげられない4つの要因 <2>-

 自分ではコントロールできない現実の2つめは、

「第二に、自ら現実の状況を変えるための行動をとらないかぎり、日常業務に追われ続ける。(中略)したがって、日常の仕事の流れに任せて、何に取り組み、何を取り上げ、何を行うかを決定していたのでは、それら日常の仕事に自らを埋没させることになる。(中略)彼らに必要なのは、本当に重要なもの、つまり貢献と成果に向けて働くことを可能にしてくれるものを知るための基準である。だがそのような基準は、日常の仕事の中からは見出せない。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 ということです。

 私は司法書士試験に合格してこれから事務所を選択しようとされている方に向けて、「キャリアセミナー」というものを実施しています。そのなかで、「司法書士として最初の3年間で学ぶべきこと」として、以下の3つの点を意識しながら仕事をすることをお勧めしています。

  (1)クライアントのビジネスモデルごとに課題と解決方法を整理
    すること
  (2)クライアントの現在の課題はもちろん、他に課題がないかも
    ヒアリングすること
  (3)自分たちの専門分野に関する部分最適の解決だけではなく、
    他の専門分野を総合した全体最適の視点を持つこと 

 これらのことはまさにドラッカーのいう「基準」です。

 通常は事務所に入ると、「申請書を作って」「登記所で謄本を取ってきて」「立会いをして」と矢継ぎ早に仕事が言い渡され、目の前の業務に埋没していきます。
 一つひとつの作業はできるようになりますが、成果をあげるためにいかに行動すべきかについてはいつまでも理解できません。

 司法書士の所長からは「うちの所員は目的意識がない」「いつまでたってもできるようにならない」といった相談を受けることが多いのですが、その原因の一端が、日常のルーチン業務のなかには「基準」が見出せないことにあると気づいている方は、ほとんどいらっしゃらないような気がします。

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2009年5月19日

働く者をとりまく組織の現実  -成果をあげられない4つの要因 <1>-

 P.F.ドラッカーは、

「組織に働く者の置かれている状況は、成果をあげることを要求されながら、成果をあげることがきわめて困難になっている」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 と述べ、その理由を自分ではコントロールできない「4つの現実」があるためだとしています。その一つひとつについて、回をわけてお話をしていきましょう。

「第一に、時間はすべて他人に取られる。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)


 「ちょっと教えて」「ちょっと申請書作って」「ちょっとチェックして」・・・・・・自分のミッションを果たすための時間は頻繁に中断され、元の仕事に戻って記憶をたどっていると、また別の用事が他人から言い渡される。

 知識労働者が効果を出すための要件の一つは、自らのミッションを果たすためのまとまった時間を取ることです。しかし一方で、他人の時間を奪わないと自身の仕事を進められないという現実があります。
 この現実と上手くつきあうためには、自らそのことを意識すること、そのための組織のルールを作ること、といった対応が必要となります。

 例えばある事務所では、メールをチェックして返信する時間帯を決めました。メールによって業務が頻繁に中断されることが減ったことで、業務効率は相当程度アップしたそうです。また、某女性下着メーカーでは、外部からかかってきた電話を受けない時間帯を作ったそうです。これも、その時間帯は電話により仕事を中断されず他の業務に集中できることから、生産性の向上につながったという話です。

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2009年5月13日

すべての者がエグゼクティブ  -司法書士事務所におけるエグゼクティブとは-

 エグゼクティブを辞書で引くと、「企業などの上級管理職。経営幹部。重役。」と出てきます。では、そのエグゼクティブの役割とは何でしょうか?私は、期待される成果のために意思決定をすることだと考えます。そしてエグゼクティブは、その決定に基づく成果に対して責任を持たなければなりません。

 P.F.ドラッカーは、

「今日、企業、政府機関、研究所、病院のうちもっとも平凡な組織にすら、重要かつ決定的な意思決定を行っている人たちがいかにに多くいるかということについては、ほとんど認識されていない。知識による権威は、地位による権威と同じように、正統且つ必然のものである。彼らの意思決定は、本質的にトップの意思決定と変わらない」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 と述べています。

 司法書士事務所においても、立会いをする人、相談に乗る人、交渉する人、営業に行く人などは、対外的に事務所を代表して意思決定を行っています。対内的にみても、所長はもちろん、ミドルマネジメント、先輩、ある専門分野に長けた人などは日常業務において意思決定を行っています。つまり、事務所に属するほとんどの人は、エグゼクティブなのです。

 経営者はこの事実を認識し、所員がエグゼクティブとして役割を果たすために何が必要かを考え、そのための手当てをしなければなりません。
 事務所の理念やビジョンの設定、職務分掌の決定、稟議制度の整備、教育訓練、人事評価など、彼らがエグゼクティブとして成果を出すための仕組みづくりこそ、所長というエグゼクティブが果たさなければならない役割なのです。

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2009年5月 8日

成果をあげる能力とは -組織化された司法書士事務所が成果をあげるために-

 P.F.ドラッカーは言います。

「頭の良いものが、しばしば、あきれるほど成果をあげられない。彼らは、知的な能力がそのまま成果に結びつくわけではないことを知らない。逆にあらゆる組織に、成果をあげる地道な人たちがいる。しばしば創造性と混同される熱気と繁忙の中で、ほかの者が駆け回っている間に、亀のように一歩一歩進み、先に目標に達する」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 このことは私たちの周りでも良く見られる現象です。知識を持っているもの、頭の回転の良いものが、必ずしも成果をあげるものではありません。

 P.F.ドラッカーは、またこのようにも言っています。

「今日では、知識を基盤とする組織が社会の中心である。現代社会は組織の社会である。それら組織のすべてにおいて、中心的な存在は、筋力や熟練ではなく、頭脳を用いて仕事をする知識労働者である。(中略)彼らは、組織の目的に貢献して、初めて成果をあげることができる。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 司法書士事務所も、個人の事務所から徐々に組織化された事務所が中心となっていくように思います。個人で、少ないスタッフを使って行う仕事の成果は非常に限定的であり、世の中にごまんとある課題には、応えきれないだろうと思うからです。

 それでは、組織に属する知識労働者はどのようにして成果をあげることができるのでしょうか。

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2009年5月 7日

教えるときにもっとも学ぶ  -生産性を向上させる最善の道-

 私は多くの専門家の方に対し、経営支援のひとつとして「メンタリング」を行っています。その過程において、私は必ず、「あなたが、あなたの事務所の課題だと思っていることを教えてください」と尋ねます。すると、ほとんどの方は、いくつかのことを課題として話されます。次に私は、「今、あげていただいた課題について、あなたはどのように考えていますか、またはどう対応したらよいと考えていますか?」と質問します。するとまた、ほとんどの方が、それに対する考えや思いを一生懸命、説明してくれます。そして、説明された対応内容が、大きく外れているということは、ほとんどありません。

 相談に来られる方は、「何が問題」で、それに対して「どのように行動すべきか」という答えを、自身の中に既に持っているのです。それを私に教えようとすることで整理され、話し始めた途端に気づく、ということが多いのです。
 教えるということは、自分が持っている「答え」を相手に伝える行為ですが、伝えるためには「答え」を確認し、分かりやすいようにまとめる、という作業が前提として必要です。
 つまり、教える = 「答え」をまとめる + 伝える ということです。

 P.F.ドラッカーは、

「第一に、生産性の向上には継続学習が不可欠であるということである。(中略)第二に、同じく重要なこととして、ここ数年の観察で明らかになったこととして、知識労働者は自らが教えるときにもっともよく学ぶという事実がある。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 と述べています。

 司法書士事務所において、所員全体の生産性をあげようと思うのでしたら、「教える」ということをもっと重視すべきです。ある業務を誰かに教えることによって、教える側が、その業務についての問題点に気がつき、何を改善しなければならないか、を学ぶことができるのです。

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プロフィール

山口 毅
TAKESHI YAMAGUCHI

山口 毅
株式会社コンサルティングファーム 代表取締役
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