2009年4月アーカイブ

2009年4月28日

仕事のプロセスを分析する -さらなる生産性向上に取り組むために-

 P.F.ドラッカーは知識労働の生産性をあげるために、

「成果が主として質を意味する仕事については、どう分析すべきかは実のところまだ分かっていない。しかし分かってはいないが、こう問わなければならない。『何が役に立つか』。また、成果が質と量の両方を意味する仕事については、『何が役に立つか』を問うと同時に、仕事のプロセスを一つひとつ分析することが必要である。作業的な知識労働については、仕事の質の水準を定め、それを仕事のプロセスに組み込むことが必要である。生産性向上は、作業を分解し、分析し、組み立て直すことによって実現できる。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 としています。

 仕事をいくつかのプロセスに分解すると、分解されたそれぞれのプロセスも知識労働の三種類のどれかに分類されるため、その生産性をあげる手段も明確になるということでしょう。

 さらにP.F.ドラッカーは、

「われわれが知識労働で必要としている生産性の革命は必ずもたらされる。ただし、一つだけ条件がある。肉体労働者の生産性向上について第二次世界大戦後学んだことを実行することである。すなわち、知識労働者自身がパートナーとなって生産性の向上に取り組むことである。仕事の水準、難易度、技能の程度に関わりなく、あらゆる知識労働に生産性と成果に対する責任を組み込む必要がある。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 とも述べています。

 司法書士事務所の経営者は、組織が大きくなればなるほど、実務家としての役割よりもマネージャーとしての役割を果たさなければなりません。当然、現場を離れることによって実務家としての能力が弱ってきますから、「自身がパートナーとなって生産性向上に取り組む」ことは困難です。
 マネージャーとして、知識労働の生産性を高めようとするならば、より狭い分野のミドルマネジメントを養成して、その者に生産性の向上を託さなければなりません。

 経営者自身が実務家としての役割を抱えたまま、現場で直接、多数の実務家の生産性を向上させようとしても、必ず失敗することになるでしょう。

| コメント(0) | トラックバック(0)

2009年4月22日

知識労働の三種類 -司法書士事務所の業務を分類する-

 P.F.ドラッカーは、知識労働には大きく分けて三つの種類があり、どの種類に分類されるかによってその生産性を高めるための要件が違ってくるとの見解を示しています。

「第一に、知識労働のいくつかにおいては、仕事の成果は純粋に質の問題である。たとえば、研究所の仕事である。量、すなわち研究成果の数は、質に比べればまったく二義的である。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 このことは、製薬会社のファイザーが、一時期バイアグラによって一躍世界のトップメーカーに躍り出た、という事実により明らかです。
 司法書士事務所で言うと、どの分野のマーケットに進出すべきか、どの地域に事務所を設けるべきか、という戦略的判断がこの領域に入ります。
 また、企業再編などで一つひとつの課題に対するスキームをつくる、といったこともこの領域に入るでしょう。会社法の深い知識、税務や許認可などの周辺知識を深めることが生産性を高めるためには重要ということです。

「第二に、質と量をともに成果とすべき知識労働が幅広く存在する。デパートの店員の成果がそれである。顧客の満足は質的な側面であり、定義するのはそう簡単ではない。だがそれは、売上高や売上伝票の枚数という量的なものと同じように重要である」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 不動産取引の立会いの際、不動産の仲介業者にアンケートをとっている事務所があります。これは質的な成果を目的とするもので、こなした立会いの件数とあわせて評価の対象になります。

「第三に、生命保険会社の保険金支払い、病院のベッドメーキングなど、その成果が肉体労働と同種の仕事が多数ある。それらの仕事の場合、質は前提条件であり、制約条件である。仕事の質は、成果ではなく条件である。最初から仕事のプロセスに組み込んでおかなければならない。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 申請書の作成業務などが、この領域に該当します。人の名前、住所、物件の表示など、正しいことが前提条件になります。そのためには、書類の作成プロセスのなかに、作成手順とチェック項目を組み込んでおかなければなりません。

 事務所の業務をきちんと分類することによって、

「知識労働の生産性を高めるには、その仕事が、成果に関して、いずれの範疇に属するかを知っておく必要がある。そうして初めて、何に取り組むべきかが明らかになる。『何を分析すべきか』『何を改善すべきか』『何を変えるべきか』を決定できる。さらには、知識労働のそれぞれについて、生産性の意味を明らかにすることができる。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 ようになるのです。

| コメント(0) | トラックバック(0)

2009年4月17日

分散化する知識労働者の仕事 -効率をあげるために時間の使い方を意識する-

 知識労働者の生産性が向上しない理由の一つとして、「集中すべき業務に集中できていない」ということがあげられます。
 ある事務所が、事務所の資格者に日々の作業実績を、10分単位で日報として1ヶ月間書かせてみたそうです。
 クライアントから相談を受けている時間、書類を作成している時間、移動している時間、調べものをしている時間、お客様に返却する書類をまとめている時間、掃除をしている時間、見積もりを書いている時間、電話で話をしている時間、などなど。
 資格者は、実に様々な作業を行っていました。しかし、驚くべきことに、資格者としてやるべき仕事をしていた平均時間は、1日8時間のうち、なんとたったの2時間ほどしかなかったというのです。

 P.F.ドラッカーは、

「知識労働者の仕事は、充実するどころか不毛化している。当然、生産性は破壊される。動機づけも士気も損なわれる。看護人の意識調査を見ても、自分が看護の世界でしようと思ったこと、そのために訓練を受けてきたことができないことにいらだっている。当然のこととして、仕事に見合う給与が支払われていないと感じている。他方、これまた当然のこととして、病院のほうは、彼ら、彼女らが行っている事務の仕事に対し、給与を払わされすぎていると感じている。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 と、知識労働者の現状についてコメントしています。

 開業してある程度経ってくると、「人材を採用したい」と考えるようになります。私のもとへも、最初に採用する人材に関して多くのご相談が寄せられてきます。
 その際に、私が必ずお聞きすることは、

 「その方を採用したら、あなたの時間はどれだけ空きますか?」
 「その方にどのような仕事を任せるつもりですか?」
 「そのことを任せることによって、あなたが割かなければならない時間はどうなりますか?」

 ということです。

 人材を採用したからといって、単純に自分の仕事が減るわけではありません。採用により増える仕事もあるのです。所長自身の仕事の効率を上げるためには、こま切れの時間をなるべく少なくして、まとまった時間を取れるように意識する必要があります。
 そのような視点から、「人」「もの」「金」をどのように投資すればよいかを考えることが重要なのです。

| コメント(0) | トラックバック(0)

2009年4月15日

「目的は何か」を問う  -司法書士事務所の生産性を向上させるために-

 P.F.ドラッカーは、

「これに対し、知識労働者の生産性の向上を図る場合にまず問うべきは、『何が目的か。何を実現しようとしているか。なぜそれを行うか』である。手っ取り早く、しかも、おそらくもっとも効果的に知識労働の生産性を向上させる方法は、仕事を定義し直すことである。特に、行う必要のない仕事をやめることである。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 と述べています。

 -夜遅くまで仕事をしている事務所がありました。-

 メンバーのほとんどは資格者で、一人ひとりがやる気に満ち、サボることもなく必死に働いています。しかし、なかなか仕事は終わりません。売り上げでみても、一人当たりの生産性はあまり良くありませんでした。

 ところが数ヵ月後・・・・・・、メンバー全員で話し合い、「ある事」を実行した結果、みんなが多少の残業をすれば帰途につけるという状態になったのです。一人当たりの生産性も上がり、事務所全体で受けられる仕事量も格段に増えました。その上、仕事の質についても高い評価を受けられるようになったのです。

 いったい、何を行ったのでしょうか?

| コメント(0) | トラックバック(0)

2009年4月 8日

知識労働者は組織に依存しない -人材に継続的に活躍してもらうために-

 司法書士事務所が組織化されるにともない、当然のことながら組織は優秀な人材を採用し、保持し、才能を生かして組織に貢献してもらいたいと考えるようになります。
 しかし、従来までの司法書士事務所は、資格者は数年で独立することを前提として採用活動を行い、事務所で働いてもらってきましたから、「組織内で継続的に活躍してもらう」ために、採用活動や資格者との関係作りを図っていくということに慣れていません。

 P.F.ドラッカーは、

「彼ら(知識労働者※山口による脚注)以外の誰か、すなわち組織が、生産のための物的な道具を所有している。しかし、組織と知識労働者はたがいを必要とする。この新しい関係、現代社会における新しい緊張関係の存在は、もはや忠誠心は報酬だけでは得られないことを意味する。組織は、知識労働者に対し、その知識を生かすための最高の機会を提供することによって、初めて彼らを獲得できる。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 と述べています。

 「知識を生かすための最高の機会を提供する」ためには、その前提として、(1)知識労働者の持っている能力とキャリアプラン、(2)そのプランに沿ってキャリア開発を目指す能力、を知らなければなりません。そして、その二つが組織の理念やビジョン、さらには理念やビジョンを実現するための組織・人材戦略に、合致しているかどうかを確認する必要があります。

| コメント(0) | トラックバック(0)

2009年4月 3日

明確な使命が成果を生む -事務所の「理念」と「ビジョン」の重要性-

 私は、司法書士事務所に対してコンサルティングや人材の紹介を行う際に、必ず最初に質問させていただくことがあります。それは、「事務所の社会的使命をどのように定義していますか?」ということです。

 P.F.ドラッカーは、

「組織の使命は一つでなければならない。さもなければ混乱する。それぞれの専門家が、自分の専門能力を中心に動くようになる。自分たちの専門能力を共通の目的に向けなくなる。逆に、自分たちの価値観を組織に押しつけようとする。焦点のはっきりした明確な共通の使命だけが、組織を一体化し、成果をあげさせる。明確な使命がなければ、ただちに組織は組織としての価値と信頼を失う。その結果、成果をあげるうえで必要な人材も手に入らなくなる。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 と述べています。

 資格者が所長一人で、スタッフに作業ベースの仕事をさせている状態のうちは、所長の価値観がすべてですから、事務所の中に混乱はありません。しかし、組織体となり、資格者が複数名存在するようになると、話が違ってきます。

 専門家は、もともと個人で完結してクライエントへの価値提供ができます。それでも組織を形成する理由は、個人で成し遂げられることとは別の価値を生み出し、社会に貢献するためです。組織には、組織として果たすべき社会的使命(個人では成し遂げられない、ないしは個人では成し遂げることが困難な役割)があるのです。
 その使命を明確にしないと、組織を構成する専門家は目的の共有ができませんから、、各人の価値観を主張し、お互いにぶつかり合うことになってしまいます(ドラッカーの言う混乱が生じるのです)。
 何のために組織体でいるのか、組織体でいることによって社会に対してどのような価値を提供し、どのような貢献をするのか、を明確に定義し、個人の価値観を昇華する枠組みが必要となります。

 組織の使命は、一般的には「理念」と、それをより具現化した「ビジョン」として表されます。しかし、「理念」として明確に文書化している組織のほうが少ないというのが現実でしょう。
 明確化しなくとも組織は回っているように見えますが、その一方で、成果をあげるうえで必要な人材の採用ができなかったり、採用しても遠からずやめてしまうということが起きていませんでしょうか?
 組織に適合する優秀な人材を採用し、その方に活躍してもらうためにも組織の「理念」は重要な要素となります。

 「理念」を持ち、それに向かって能力を発揮できる人材を採用することで、「成果をあげられる組織」が形成されていくのだと思います。

| コメント(0) | トラックバック(0)

2009年4月 1日

組織が果たすべき責任 -司法書士事務所が負う社会的責任-

 独占業務を担っている士業は、クライアントから求められたことを、正当な理由もなしに拒否することはできません。それは、業務の担い手が個人であれ法人であれ、基本的には同じです。
 しかし、法人のように大きな組織は、専門性の高い業務、大量の業務、地域をまたぐ業務など、個人では果たすことが困難な業務を受託できるわけですから、受託に対する社会的責任は、個人よりも圧倒的に大きくなります。

 P.F.ドラッカーは、

「組織社会では、組織の社会的責任が問題となる。なぜならば、あらゆる組織が社会的な力をもつからである。あるいは、もたなければならないからである。しかも、その力は大きくなければならない」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

 と述べています。

 もともと個人でしか受託できなかった業務を、法人という組織体で受託できるようになった今だからこそ、上記の意味を真剣に考える必要があります。

 組織は、「組織として」どのような社会的責任を負うことになるのか、またどのような責任を負おうとするのか、を問わねばなりません。
 そのことの認識がないままに組織を拡大してしまっても、社会的責任を果たせない組織は、結局は瓦解してしまうのではないでしょうか。

| コメント(0) | トラックバック(0)

プロフィール

山口 毅
TAKESHI YAMAGUCHI

山口 毅
株式会社コンサルティングファーム 代表取締役
>>続きはこちら

アーカイブ

携帯電話からこのQRcodeを撮影することで携帯用URLを取得することができます
携帯電話用URL
http://dojou.mentoragent.org/i/

リンク集

新しい時代のプロフェッショナルへのステップアップ講座 司法書士 就職・転職支援サービス モバイルサイトのご案内 独立・開業を目指す司法書士の方へ。「司法書士開業塾」のご案内 司法書士 事業承継支援サービス 司法書士 求人 就職・転職支援サービス メンターエージェント | 司法書士で就職・転職をお考えの方はこちら! 司法書士 人材採用支援サービス メンターエージェント | 司法書士の求人・採用をお考えの方はこちら! 司法書士合格者・有資格者の方が事務所選びに成功するためのキャリアセミナーのご案内はこちら! 『おもしろき世をよりおもしろく ~専門家をとおして社会に貢献します~』